丸太の日記

胎界主とSoundHorizonのブログ

【考察】『絵馬に願ひを!』(Full Edition) 疑問点と解釈

Sound Horizon Around 15th Anniversary 7.5th or 8.5th Story BD『絵馬に願ひを!』(Full Edition)について、疑問点と自分の解釈をまとめました。

1. はじめに

先日遂に発売された絵馬フル。
購入から11日かけて、天啓ルートと手水舎の語りは全部聴くことができました。(なんかまだ隠し要素があるとかないとか)

絵馬コンでおおよその内容は既に分かっていたものの、Revoさんが宣言していた通り情報量の多い作品となっており、何が分からないのかも分からない状況です。
聴き込んでいく前にまず、ここまで聴いた中で浮かんだ事実関係の疑問点と、現時点での自分の解釈を整理しました。

2. 疑問点と解釈

細かい疑問を出してたらキリがないのでキリよく八つで。
あんまりガッツリ書くつもりは無かったんですが長くなってしまいました。

2.1 白い天井のパートは誰?

16の星を集め終えた後に一度だけ観ることができる、白い天井の部屋(病室?)で目覚めた誰か。
首は動くが身体が動かず、声も出ないとのこと。
やけに静かな部屋と言っているので、声が出ないのではなく耳が聴こえなくなったのかもしれません。

多くの人が予想していますが、やっぱりこれはノエルじゃないかと思います
大きな理由としては、文字のフォントがヴァニスタの「いずれ滅びゆく星の煌めき」と同じことと、16の星が集まってできた星がヴァニスタのジャケットの星に似ていること。

ここのパートは流石にこれだけだと中途半端なので、次作のRINNEへの布石になってるのではないかとも思います。

2.2 神社/能楽関係者って何者?

まずこの二人は同一人物と考えています。違う部分がなさ過ぎるので。

『ある霊能少女の告白』で天照美禍が、「意識の主体はどちらに」「中の人は本来」などと言っているので、狼面と身体は別の存在のようです。
また『狼欒大社』の手水舎パートの歌詞から、JK/NKは二人の姫子と同様に、生まれなかった双子の片割れなのではないかと思います。
天井パートがノエルという前提で考えるなら、身体の方がノエル(の精神か魂かなにか)で、狼面の方=JK/NKの人格が生まれなかったノエルの双子の兄弟、とするのが収まりが良さそうです。*1

『狼欒神社』の「キミを《否定する》(救う)ため」と『狼欒神社』の「キミの《鼓動》」のキミが同じだとすれば、因子の星を集めることでノエルを目覚めさせることがJK/NKの目的と考えられそうです。*2

じゃあなんで星を集めるとノエルが助かるの?そもそも星って何?
その辺は作品の主題に関わってきそうなので後で考えます。

↑ここすき

2.3 月人の力って何?

月人には第四の壁を超えるような言動が多々みられます。
『《祝い酒に隠し味を足してあげる理解者?》な男』での台詞から、世界が何者か(大神)の力によって廻り続けていることは認識しつつも、自身はそれに干渉する力は無いようです。

彼が「生きているのはボクだけ」と思い至ったのは父の影響が大きいとは思いますが、この力とも関係がある気がします。
サンホラにはメタ視点をもつ人物が度々登場しますが、中でもミシェルが何らかの力に目覚めたのは幼少期に受けた虐待が切っ掛けっぽいので、もしかしたら月人もそうなのかも。
まあ美禍も似たような力があるようですし、そういう特別な人間は偶に生まれることがある、というだけかもしれませんが。

2.4 『生と死の遊戯盤』はいつの出来事?

主に、天黎五年葉月とする説と、天黎十五年如月とする説に分かれそうですが、どちらの説も微妙に腑に落ちないところがあります。
月人の遊戯の相手、猫を治している奴=鹿屋野という前提で考えています。

天黎五年説
【根拠】
『遊戯盤』でサカバヤシナギヒトが妻を殺害した事件のニュースの音声が流れており、『ある母親の記録』で鹿屋野が天黎五年葉月四日に同一と思われる事件について記しているため。
【疑問1】
鹿屋野の日記にこの頃に月人と接触した記述がないのはなぜ?
⇒反証:月人は鹿屋野を特定したものの、ことを起こす前に父親の事件が起きてしまい直接接触はできなかったのでは。
【疑問2】
鹿屋野の日記で「パトロール中に何度か見かけた」と書かれている月人の格好は、『遊戯盤』の学ラン姿ではなく、『生きているのはボクだけなんだろ』の頃の野球少年姿のため、この時の月人はまだ小学生だったのでは?
⇒反証:鹿屋野が初めて猫を治療したのは天黎五年如月七日。そこから弥生までの間の「猫さんパトロール」で小学生の月人を目撃→卯月に月人が中学に進学→葉月までに遊戯盤、という順番なら矛盾はないか?でもそれだと葉月の日記で小学生の時の月人の姿を書くのはちょっと違和感。

天黎十五年説
【根拠】
天黎十五年如月十日の鹿屋野の日記と、『生まれちゃいけない命』などで月人が姫子の目を見て「天黎十五年如月」を思い思い浮かべていることから、この時期に月人と鹿屋野が何らかの接触をして、両者がその記憶を無くしていると思われるため。
【疑問1】
ナギヒトの事件の後、月人は遠くの街へ引き取られたようだが、なぜ十年後に再び久世市に戻っているのか?
⇒反証:遠くと言っても中学生なら行き来できるくらいの距離で、猫虐待の足がつかないように遠くの、勝手知ったる故郷で犯行に及んでいたとか?
あるいは単に中学進学とともに戻っていたのかも。
【疑問2】
『ある獣医の記憶』によると、須久奈鷹彦は鹿屋野が亡くなる天黎十五年には獣医になっている(もしくは勉強中)ため、月人との年齢差が十近くあることになるが*3、二人の関係を見ると同世代くらいに思える。*4
⇒反証:従兄弟同士だし、その辺の関係性は人それぞれでは。

自分としては天黎五年の方がありそうかなと思いますが、一回ちゃんと時系列を整理しないと分からなそうです。

2.5 月人と神社関係者の約束って何?

手水舎の、月人がJKに語りかけていると思われる音声にて言及された約束。
これは恐らく、Around 15周年記念祭のWEB配信版の特典音声で言っていた、月人が前説をする見返りとしてJKに要求した約束のことでしょう。

話の流れ的に「月人の邪魔をしないこと」が約束だったようですが、JKが信徒を集めるために行った行為またはその結果が、月人の目的の妨げになってしまったようです。

月人の目的は分かりませんが、やっぱり佐久夜姫子へ干渉されたことが邪魔だったのではないかと思います。
『秋季例大祭』のような月人にとって不本意な結末へ導かれたり、狼欒大社側はそもそも佐久夜姫子のいない地平だったり。
あとは大山の病の原因が月人だとすれば、その病を治したこともあるかも。

2.6 「燃やせ…燃やせ…」の少年は誰?

手水舎の謎の少年の独白。
素直に考えるなら少年は『13文字の伝言』の伊坂夫妻の息子である「放課後の放火魔」で、「声」の主は伊咲那美はないかと思います。
那美の呪いは単なる恨みや憾みだけではない、ということでしょうか。*5

放火に関係する要素は作中に色々あり、『未来の主人公達へ』後の石碑や『ある操觚者の記憶』で放火犯が増加するらしいことが語られていますが、これらも含めて全て一連の事象な気がします。

2.7 許理暴行事件の真相は?

『夜を滑る二人』『夜を駆ける二人』で語られる、八石許理が暴行された事件。
宗像狭依の『ある少女の告白』と合わせて考えると、狭依は自分がセンターになるために前のメンバー二人を追い出したものの、今度は新メンバーの許理が人気になってしまい、また追い出すために「下衆」を手引して許理を襲わせた、ということのようです。

ここで『死を廻る刻の記憶』の、犬彦がスワタケに言っている事件がこの件だとすると、少し複雑です。
実行犯は「UNDER THE MOON」の構成員だったようですが、スワタケが関与していたのかどうかはどっちとも取れます。
個人的には「直接関わってはいないけど知ってはいた」くらいかなと思います。

ここから更に犬彦の暴行事件OR許理の失踪事件がこの件に関わってそうですが、この辺まで来るともうよく分かりません。
まず宮比ルートと犬彦ルートがどの程度共通しているのかから考えないといけなさそう。

2.8 「人間と動物の区別がつかなくなる脳の損傷」って何?

『ある操觚者の記憶』で久延さんが言っていた取材案件の中の一つ。
他の案件は絵馬や別平*6のネタでなんとなく分かりますが、これだけよく分かりません。

こじつけるなら『君/私の心に一番近い指』の八島さんは人と犬の区別がつかなくなっていたとか?(そんなことある?)
他に動物が関係しそうな要素といったら月人か犬彦か、『秋季例大祭』の「いつからアレを【猫】だと思い込んでいた」か。
単に「そういう都市伝説がある」というだけの話かもですが。

3. おわりに

『絵馬に願ひを!』は随所でRINNEとの繋がりが示唆されているので、もしかしたらRINNEで明らかになる事実もあるかもしれません。
が、基本的にサンホラで、この手の謎の真相が後から明かされることはありません。*7

また事実関係の整合性だけを見てもあまり意味はないというか、結局は其処に《物語》を感じられるかどうかが重要だと思います。
続き絵馬を周回しながら考えていきたいです。

*1:ノエルにヴァニシングツインがいた説は、祖母の手紙に「双子」という単語があったため以前から言われており、小説版でも採用されていました。

*2:サンホラにおけるカタカナの「キミ」は複数か不特定多数の対象を指すと私は解釈していますが、この場合は姫子とノエル両方を指していると思います。

*3:日本で獣医師免許を取るには大学で六年間学ぶ必要があるそうです。まあ秋津皇国の法律が同じとは限りませんが。

*4:タメ口同士なのもそうですが、「物心ついた頃には付き合うなと言われていた」って何歳の時の話?とか、月人が町を離れた時期と鷹彦が町を離れた時期は間が開いているはずでは?「時は流れ~私もこの町を離れていた」と言っている頃に月人が既に戻ってきているのは変では?など、鷹彦の記憶との整合性が取れない気がします。

*5:個人的には『13文字の伝言』は、子供側の考えや言い分を描いてないのが好きなので、こういう補足はどうなんだろう?とちょっと思ったり。
ただ人の手の及ばない大きな因果が誰かの人生を左右しているかもしれない、という部分を強調する意味では必要なのかな、と思わなくもなかったり…

*6:別平:別の地平線の略称。

*7:死人戦争って何?とか、テレーゼとアンネリーゼの関係は?とか