丸太の日記

胎界主とSoundHorizonのブログ

胎界主 第三部 序盤の雑感 [前編:気になるキーワード]

Web漫画『胎界主』第三部<翻訳儀典>序盤の、気になるキーワードについて書きました。
鮒界市篇(国内) 土曜日あたりまでの内容です。

1.はじめに

www.taikaisyu.com

胎界主第三部の連載が開始して2年が経ちました。先日遂に主人公(?)が登場し、色んな意味で盛り上がっています。

作者の尾籠憲一先生曰く、「完結には12年くらいかかるとのことなので、まだまだ序盤といったところですが、現時点でも多数の組織や派閥、人物の思惑が交差し、大分複雑な状況になってきました。

そこで備忘録も兼ねて、個人的な感想や考察などをまとめました。
前編は今後のストーリーに関わってきそうなキーワードについて、後編は各勢力の状況についてです。

鮒界市篇(国内)土曜日 03-24までの内容を反映しています。

2. 気になるキーワード

2.1 翻訳儀典

第三部の副題でもある「翻訳儀典」。それが何なのかは未だ作中で明らかにされていません。
第三部の構想段階での副題は「翻訳世界」でした*1。わざわざ変えたからには、第三部全体のテーマにかかわる重要な言葉なのではないかと思います。

「翻訳」はこれまでも頻出のワードで、辞書的な意味以外に、人間が行なう『たましい』による創造行為のことを指したりします。
「儀典」はあまり聞き馴染みのない言葉ですが、儀式についての決まりごとのことだそうです。
ファンボックスのトップにあるロゴマークをみると、翻訳儀典の英訳は「Translation Ceremony」のようです。儀典はProtocolとも訳されるようですが、Ceremonyということは単なる決まりよりも、儀式に近いニュアンスなのかもしれません。

この少年、既出の登場人物ではなさそうですが一体何者なのか。頭に載せた本が翻訳儀典?彼自身が翻訳儀典?

尾籠憲一 Fanbox https://www.fanbox.cc/@taikaisyu

作中での扱いは、今のところは「帝王が六王に与えた行動指針」、「サタナキアがメフィストフェレスに与えた行動指針」ということぐらいしか分かりません。
現時点で想像できる翻訳儀典の意味は、「『たましい』を持たない悪魔のような神獣が創造を行なうための儀式」といった感じでしょうか。

翻訳儀典とは何なのか、帝王は何のために翻訳儀典を与えるのか、これらは第三部の大きなポイントになってきそうです。

ピュア曰く「真実が無ければどうすればいいか分からない」。翻訳儀典は悪魔にとっての真実となるのでしょうか。

胎界主 第三部 サタナキアの提案 http://www.taikaisyu.com/0%20honyaku/01-07/28.html

2.2 3つのエピソード

尾籠先生のエッセイによれば、第三部では「悪魔 東郷 管理者 骸者 ソロモン 主人公 その他」「2つの生成世界と魔界 夢想胎界を舞台に絡み合う」*2ということで、一部、二部よりもさらに群像劇の様相が強まってきそうです。

第三部の構想にあたり、全体の構成に大きな改変があったようで。当初は順番に展開する予定だった3つのエピソードを同時進行させる形に変えたとのことです*3
3つのエピソードとはそれぞれソロモンヘイム、ロックヘイム、魔界を舞台にしたもので、現在連載している鮒界市でのアレコレはソロモンヘイムでのエピソードに当たるものと思います。
目次を見る限りは、ソロモンヘイム(鮒界市篇)→ロックヘイム(師匠国篇)→魔界(魔界篇)と順番に展開していくように見えますが、実際は「数百のエピソードがあっちゃこっちゃ飛ぶ」複雑な構成のようです。

多分12年じゃ終わらないと思います。

胎界主 第三部 http://www.taikaisyu.com/0%20honyaku/index.html

その結果、序盤は「起承転結の「起」ばっか」、「話が一歩も進まねぇ」状況になっているとのこと。確かに今のところ状況説明的な場面が多く、全体的に前フリをしている印象を受けます。
もうすぐ訪れる、鮒界市での「生物兵器」の開放は最初の山場になってきそうです。
それぞれの物語がどう絡みどう収束していくのか。

また3つのエピソードの先にある「終焉」とはなんなのか。
翻訳世界すべての終焉のことだとすれば、現状で可能性があるのは、アスの死を引き金とする生成世界への全司神降臨でしょうか。
「メチャ面白い そして大けっさく*4だそうなので、今から楽しみです。

右下コマの場面はマジで危なかったんですね

胎界主 第三部 サタナキアの提案 http://www.taikaisyu.com/0%20honyaku/01-07/15.html

2.3 状態復元期

次の1月7日月曜日、第二部のラストで起きた司神降臨などの一連の事象節から999日が経過し、「状態復元期」が来るようです。

999日(約2年9ヶ月)周期で訪れるという状態復元期。細かい仕様は分かりませんが、大きく変化した事象が元の状態に戻るようです。
魔法則が朝日とともに1日周期で解除されるののスケールの大きい版みたいな感じでしょうか。
また、999ヶ月(約83年3ヶ月)周期で訪れる「中期の状態復元期」というものもあるようです。

帰省後はソロモンヘイムには戻らないみたいですが純子はどうするんでしょう。

胎界主 第三部 土曜日 http://www.taikaisyu.com/0%20honyaku/004-04/07.html

月曜日の状態復元期に予定されている出来事はこんな感じ。

  • 鎖界が解かれ、ソロモンヘイムとロックヘイムが行き来できるようになる。
    それに合わせて
    ・純子とルーサーが使い魔任務でロックヘイムへ行く。
    ・純子とリースが仲直り里帰りでキナモムムへ行く。
    ・ソロモンがアスの身体に戻る。
    ・サタナキアがソロモンをロックヘイムに追いやるため、生物兵器を放つ。
  • リョースのヨ、オ、リが復活する
  • ファントムとドローネが復活する

最大の変化はロックヘイムの鎖界が解かれること。
骸者が滅んだことで悪魔と管理者は緊張状態にあり、生成世界間戦争も危惧されているようですが、両陣営はどう動いていくのか。
他にも主水や情おじさんがロックヘイムから戻ってこれるようになるなど、状態復元期を期に各勢力が動き出しそうです。

ファントムとドローネが夢想胎界に入ったのは生体金庫戦の数日前なので、若干誤差はあるかも。

胎界主 第二部 生体金庫 http://www.taikaisyu.com/00roc/roc-045/11.html

2.4 記憶リセット

第三部で明かされた、人類の記憶は悪魔の手により定期的に記憶をリセットされているという設定。
中期の状態復元期である999ヶ月=83.25年周期で実施されており、数年以内に3度目のリセットを実施予定だそうです。

サーシャによれば目的は「大惨事の隠蔽」「人類の停滞」とのことです。
「大惨事の隠蔽」に関しては、第一部の頃から示唆されていました。(まさか歴史ごとループしているとは思いませんでしたが)
悪魔の権威を高めるため、骸者に存在承認を与えないため、司神を降臨できるという情報を広めないため、などと理由は理解できます。

一方で「人類の停滞」の理由については、まだよくわかりません。
文化や文明が発展すると悪魔を滅ぼしうる人間が生まれる可能性がありそれを防ぐため、ということでしょうか。(ただそれならソロモンが出たイスラエル王国時点でやっていても良さそうですが)

悪魔が管理していないロックヘイムの人間や、人間以外の存在(神獣、妖精)はどうなのかなども気になるところです。

この設定に関しては影響範囲が大きすぎて、どうやるのか、どこにどんな影響があるのか、正直検討がつきません。
次回の実施も数年先なので、本編では描かれないような気もします。

いろんな整合性がどうなってるんだって感じですが、認識&推測ロックでどうにかしてるんでしょうね。

胎界主 第三部 ロシア国立感染症研究所 http://www.taikaisyu.com/0%20honyaku/002-05/03.html 

2.5 主の不在

ここまでのエピソードでは、「主の不在」が繰り返し描かれてきました。
帝王を探すサタナキアに始まり、三名が発狂し「ス」だけになった管理者リョース、東郷善の後釜を求める東郷家、ピュアを探し続けるフランツ、レックスの女たち、稀男の帰りを待つリースと鮒界市の面々など。
まだ出ていませんが、ハッグ亡き後のバンシー牧場も気になります。

アスタロトの考えた神話によれば、創造主である<神>は、その創造に失敗し何処かへ去ったとも言われています。
メフィストフェレスは<神>など存在しないし、<神>について考えることに意味も実利もない、「語りえぬもの」のように考えていました。
しかし第三部の古代王国篇ではサタナキアによって言及されるなど、改めて<神>が重要な意味をもってきそうです。

世界を創った主が居なくなった後の世界で残された者たちにできるのは、主の帰りを待つことか、新たな主を探すことか、自分が主になることか。
『胎界主』の世界における根源的なテーマにつながっていくのかもしれません。

「俺は神サマじゃないから責任は取れない」と稀男は言いますが、<神>にならすべての責任を取れるのでしょうか。

胎界主 第一部 帰還 http://www.taikaisyu.com/27-01/33.html

3. まとめ

今回挙げた以外にも、「食事と排泄」「助ける・助け合う」なども印象的です。いずれのワードも第一部から続くテーマと地続きだと感じます。
設定面では、これまで曖昧だった組織体制や世界の根本的なルールが明らかになり、世界の全容が見えてきました。
まだどこに向かっているか分からない第三部ですが、『胎界主』という物語を総決算する準備が整えられているように思います。

後編では各勢力・キャラクターの現状や目的、関係性などについて書きました。

maru-ta11.hatenablog.com