ブレイブリーデフォルト2のサントラの、Revoファン目線の感想(と考察?)です。
1. はじめに
『BRAVELY DEFAUL Ⅱ』(以下、BD2)は、スクウェア・エニックスより2021年2月26日に発売されたNintendo Switch用のRPGゲームです。本作の音楽は、シリーズ一作目である『BRAVELY DEFAULT FLYING FAIRY』(以下、BDFF)以来9年ぶりにサウンドクリエイターのRevoさんが担当しています。
Revoファン的にも、Revoさんの魅力である音楽ジャンルの多彩さを楽しめる嬉しい機会です。本記事ではBD2の音楽について、ゲームをプレイして、またプレイ後にサントラを聴いて、個人的に良かった所や印象に残った所(Revoさんが言うところの”胸熱”な所*1)をまとめました。
ゲームの方は試練や希少種討伐がまだ残ってますが、7章エンディングまでクリアしています。BD2本編のネタバレがあるのでご注意ください。
2. 感想
2.1 キャラクターと楽器の関係
BD2では前回のBDFFと同様、主人公4人にそれぞれ楽器が割り当てられています*2(下表参照)。またこの楽器は各キャラクターに対応する、4つのクリスタルが司る元素にも対応しています。このキャラ・元素・楽器の組み合わせが作中の様々な楽曲で使われています。
キャラ | セス | グローリア | エルヴィス | アデル |
クリスタル | 風 | 水 | 土 | 火 |
楽器 | スパニッシュギター | ハープ | クラリネット | トランペット |
テーマ曲 | 航海の業 | 王女の矜持 | 最高の一杯は | 流浪の焔 |
必殺技曲 | 暴風をも従える術とは航海の業 | 失意に濡れども花開く王女の矜持 | 大地の恵み最高の一杯は戦いの後で | そして流浪の焔は舞い上がる |
主人公4人のテーマ曲と必殺技曲では、主旋律にこの楽器が使われており、どの曲も楽器の良さを打ち出したキャッチーな曲になっています。個人的なお気に入りはエルヴィスの必殺技『大地の恵み最高の一杯は戦いの後で』。バトル曲としてのシリアスさもありつつ、エルヴィスの鷹揚な性格に合った陽気な曲です。
メインテーマ『再び希望へ向う序曲』や、オープニング曲『勇気ある者に捧げる誓い』では、4つの楽器が順番に入ってくるパートがあり、4人が集まったことで物語が始まるという胸熱演出になっています(多分)。
キャラクターに直接関係しない曲でも、元素と楽器の対応が使われています。
4つのクリスタルによる影響を受けた国、サヴァロン、ウィズワルド、ライムダール、ホログラードのBGMには、それぞれ対応するクリスタルの楽器が使用されています。
国 | クリスタル | 曲名 |
ハルシオニア | - | 春風の国 |
サヴァロン | 水 | 渇水の国 |
ウィズワルド | 土 | 魔法の国 |
ライムダール | 火 | 深雪の国 |
エンデルノ | - | 辺境の村 |
ホログラード | 風 | 軍王の国 |
マグ・メル | - | 妖精の郷 |
本作のダンジョン曲には、ダンジョンの環境によってアレンジを変えた複数のバージョンがあります。ゲームプレイ中はあまり意識しませんでしたが、火山地帯のダンジョンで流れる『例えば灼熱に揺らぐ洞窟』では火を象徴するトランペットが入るなど、元素に対応したアレンジによってダンジョンの雰囲気が再現されています。
ダンジョン種類 | 曲名 |
遺跡 | 例えば時に忘らるる遺跡 |
例えば朽ち果てし遺跡 | |
例えば大樹に抱かれし遺跡 | |
例えば細氷が舞う遺跡 | |
洞窟 | 例えば寂寥と佇む洞窟 |
例えば冷涼たる洞窟 | |
例えば玲瓏たる洞窟 | |
例えば灼熱に揺らぐ洞窟 | |
樹海 | 例えば幽玄なる樹海 |
例えば水が流るる樹海 | |
例えば瘴気を放つ樹海 | |
例えば霧に烟る樹海 | |
例えば寒冷なる樹海 | |
楼閣 | 例えば敵意に満ちた楼閣 |
例えば魔を求道する楼閣 | |
例えば水音が響く楼閣 | |
飛空艇 | 覇道の空を翔ける艇 |
ミューザ聖廟 | 亡国の聖廟 |
楽器の繋がりは探せば他にもあると思います。楽器の音色が人物や情景とリンクすることで、音楽にも物語的な意味合いが出てくる胸熱な演出です。
2.2 アスタリスク戦
中ボスに当たるアスタリスク所持者との戦闘曲は、BDFFでは1曲でしたが、今作では下表の通り6曲(+アレンジ2曲)もあります。(ブレイブ以外の)アスタリスク所持者との戦闘前には、緊張感を煽るイベント曲『戦いへと至る避けられぬ対立』が流れ、そこからシームレスに各戦闘曲へと繋がります。この演出自体も胸熱ですが、サントラでもこれ再現されており、『戦いへと~』と『星を授けられし者達との戦い』が途切れずに連続再生できるのが嬉しいです。ただ欲を言えば、他のアスタリスク曲にも繋がるようになっているとより良かったです。
アスタリスク戦の曲でお気に入りはスローン戦の『勇気ある者への試練』。メインテーマをアレンジしたメロディもかっこいいですが、終盤に入るスパニッシュギターは、スローンが風のクリスタルに選ばれた先代の光の戦士であることを表していて胸熱です。
他に好きな曲はホログラード3幹部の戦闘曲『覇道の影に~』シリーズ。ボスであるアダマスのテーマ『覇道の影』をベースにしつつ、各キャラの個性に合わせてアレンジされているのが楽しいです。
アスタリスク | 曲名 |
星を授けられし者達との戦い | |
モンク、シーフ、 |
対峙すべき者達との戦い |
邪なる者達との戦い | |
ジャッジメント | 覇道の影で閃く審判 |
ファントム | 覇道の影に傅く亡霊 |
魔人 | 覇道の影を蠢く魔人 |
魔剣士 | 覇道を征く魔剣 |
ブレイブ | 勇気ある者への試練 |
2.3 ラスボス関係曲
BD2ではラスボス戦が三度あり、その戦闘曲は下表の通り5曲あります。
5章ラスボス戦闘曲『焦がれ飛び出し濡れ堕ちて、その暗闇に舞い上がるもの』は、エドゥナのテーマ曲『暗闇に魅入られしもの』(メイン楽器はチェンバロ?)をベースにしています。『焦がれ飛び出し~』のイントロは、彼女の妹であるアデルのテーマ『流浪の焔』と共通しています。これだけでも熱いのですが、6章でどちらの曲も、二人の故郷であるマグ・メルの曲『妖精の郷』が元になっていた事がわかる展開が胸熱です。どうでもいいですがRevoさんの曲名で読点が入るのは珍しいですね。
7章ヤミノヒトミ戦では、主人公4人が奪われた記憶を取り戻すイベントがありますが、その時の効果音も含めて一つの曲になったのが『暗闇を見つめし瞳』~『暗闇に星を集めし者達』です。特に『暗闇に星を~』は今作バトル曲の集大成とも言える、Revoさんお得意の全部乗せ曲。BDFFのラスボス戦『地平を喰らう蛇』では、主人公4人の必殺技曲メドレーからのメインテーマという熱い展開でした。今作ではさらに、アスタリスク戦6曲のメロディまで盛り込んでいます。記憶を奪うヤミノヒトミに対し、これまでの星(アスタリスク)を集める戦いの記憶で抗う展開が胸熱です。
章 | ボス | 曲名 |
5章 | エドゥナ | 焦がれ飛び出し濡れ堕ちて、その暗闇に舞い上がるもの |
6章 | ヤミノヒトミ (1,2戦目) |
暗闇の操り人形 |
ヤミノヒトミ (3戦目) |
暗闇へ堕つる叡智 | |
7章 | ヤミノヒトミ (第一形態) |
|
ヤミノヒトミ (第二形態) |
暗闇を見つめし瞳 | |
ヤミノヒトミ (イベント後) |
暗闇に星を集めし者達 |
2.4 エンディング関係曲
BD2は5~7章に個別のエンディングがあり、それぞれグローリア、アデル、セスとの別れが描かれます。それに合わせて、下表の通りイベント曲とエンディング曲も3種類ずつあります。(ちなみにブックレットに記載されている『忘却と喪失を越え希望へ向う譚詩曲』は誤表記なのでご注意ください。*3)
章 | 5章 | 6章 | 7章 |
キャラ | グローリア | アデル | セス |
エンディング イベント曲 |
抗えざる 運命の枯渇 |
抗えざる 運命の宵闇 |
抗えざる 運命の朝凪 |
エンディング曲 | 希望を遺した譚詩曲 | 希望を残した譚詩曲 | 喪失と忘却を越え 希望へ向う譚詩曲 |
イベント曲『抗えざる運命の〇〇』は、いなくなったキャラのテーマ曲のピアノアレンジになっています。曲名がそれぞれ、グローリア(=水)の喪失→枯渇、アデル(=火)の喪失→宵闇、セス(=風)の喪失→朝凪と、クリスタルに対応した曲名になっているのも上手いですね。エルヴィス喪失エンドがあったら「抗えざる運命の落盤」とかかしら?
エンディング3曲は前半部分がほぼ共通していますが、バットエンドの5・6章ED曲『希望を遺した譚詩曲』『希望を残した譚詩曲』に比べ、ハッピーエンドの7章ED曲『喪失と忘却を越え希望へ向う譚詩曲』は優しい声色で歌われています。また7章EDはスタッフロール後、一旦スタート画面に戻る演出がありますが、『喪失と忘却を~』はそれに合わせて曲構成されており、ストーリー・システム・音楽が一体となった胸熱演出になっています。
ED曲は歌詞も良かったです。BDFFのED曲『希望へ向う譚詩曲』は、曲としては好きだけど歌詞のリンクが弱い(特に進撃関係の楽曲と比べてしまうと)と思っていましたが、今作の『喪失と忘却を~』ではよりストーリーに沿った歌詞になっています。特に良かったのは「波の音」「茶葉の香」「革靴」の歌詞。これはそれぞれグローリア、エルヴィス、アデルのクエストイベントから引用されています。またここのメロディはフィールド曲である『〇〇の地平』のアレンジになっており、3人がセスとの旅の思い出を振り返る歌詞になっています。
3. まとめ
ゲームとサントラを振り返ってみて、曲単体のインパクトでは正直、BDFFの『彼の者の名は』や『地平を喰らう蛇』の方が大きかったように思いますが、全体を通しての曲同士の繋がりや纏まり、ゲームへの寄り添い方は今作の方がパワーアップしていると感じました。 まだまだ気づいていない胸熱要素があると思うので、今後も繰り返し聞いていきたいです。