SoundHorizonリマスター版特典のイラストミニ屏風について、『絵馬に願ひを!』発売前に個人的な感想や考察をまとめました。前回の記事も参照ください。
maru-ta11.hatenablog.com
- 1. 全体
- 2. 第六扇(エリ組)
- 3. 第五扇(少年剣・Roman)
- 4. 第四扇(イベリア・Moira)
- 5. 第三扇(イド・Märchen)
- 6. 第二扇(ハロ夜・絵馬?)
- 7. 第一扇(ヴァニスタ・Nein)
- 8. まとめ
1. 全体
- 扇
屏風の面は「扇」と呼び、右の扇から順に「第一扇」、「第二扇」…と数えるそうです。
扇の並びは左から発売順ですが、第一扇と第六扇が繋がり円環状になっています。円環状と言えば、Romanのジャケットは左右が繋がり朝と夜という一日単位のループになっており、生と死の繰り返しを表していました。対して屏風では、季節の移り変わりという一年単位のループとなっており、「アラウンド15周年」を表していると思います。
ただ、頻出モチーフの太陽、月、星が無いのが気になります(よだかの星はあるけど)。天体は時間の流れと繰り返しを表すのに便利ですが、それがないということはこの屏風は外界から切り離された、静止した世界と言えるかもしれません。 - 逆さ屏風
死んだ人の枕元に上下逆にした屏風を立てる「逆さ屏風」という風習があるそうです。死後の世界は現世の逆の世界だからだとか。この屏風では一部のキャラクターが上下逆向きになっています。また正向きのキャラがいる側は空が青く朝なので生、逆向きのキャラがいる側は空が紫で夜なので死の世界と思われます。生サイドのキャラが死サイドに影を落としているのは、いずれ死ぬ事を表してるかもしれません。(岩や建物にも影あるし違うか?) - すやり霞
日本画でよく見る金色の雲みたいなやつは「すやり霞」と呼ぶそうですがこれもそうでしょうか。雲の上にいる人物(クロニカ、イヴェール、詩女神、Nein組)はなんとなく共通点がある感じです。地平線の物語を俯瞰するキャラ、メタ(高次)存在といったところでしょうか。Lost枠があればロス子や永遠の少年も雲の上に来そうです。手前にいるほどより高次の、現実世界に近い存在に思います。雲の上のキャラには影がないので、物語上の生死から外れているのではないかと思います。
2. 第六扇(エリ組)
- 背景
白い木は桜でしょうか。エリ組のジャケットでは地面が白い花に覆われ、花弁が舞っていましたが、桜というイメージはありませんでした。奥には山がありますが、こちらもあまりエリ組と繋がりません。第五扇まではみ出しているので、神々が愛した楽園要素かもしれません。 - アビス
笛吹き男バージョンのアビス。元ネタの「ハーメルンの笛吹き男」は縦笛のイメージがありますが、アビスはやはりフルートですね。全キャラクターの先頭にいることで屏風全体がアビスに続く楽園パレードのようにも見えます。 - エリス
全キャラ中唯一裸足のエル、元気そうで何よりです。ただエリ組のジャケ同様、アビスのマントの中に収まっているので、アビスが作り出した幻想という気がします。 - アビスサイド
全員生側。基本的に曲中で死んでないので、確かに生側の方だと思います。楽園パレードは死ぬことができない者たちという解釈が強まりました。エリ組のジャケでは皆笑っていたので楽園にいる感じでしたが、今回は姿勢や表情が描き分けられており、より生きている感じがします。
ソロルはyokoyan氏の個人サイトでも何回かイラストが描かれていましたが、これまでで一番肉付きがいい気がします。絶対領域が嬉しい。スタダ子はスタイルがいいので、スタダよりも憎束のステラの印象に近いです。ドレスが第五扇にはみ出ている理由は思いつきませんでした。
3. 第五扇(少年剣・Roman)
- 白鴉
少年剣ジャケット裏面に描かれていた白鴉ですが、曲中には直接的に登場していません。今回屏風で描かれたということは、思っていたより少年剣のテーマに関わっているのかもしれません。クロセカにおける白鴉は、黒に象徴される歴史の絶対性に抗うことの象徴だと思っていますが、少年剣の三曲もその視点で聴き直す必要があるかもしれません。 - 少年
背から伸びる翼が風車にかかっているのがいいですね。 - クロニカ
本(予言書?)が赤く光っているのが気になります。立ち位置(メタ度)は店主と同程度ですが、クロニカの場合は更に手前から伸びる黒い奴と同化しています。これは屏風の縁から伸びているように見えます。現実世界に近いというよりは、現実と幻想を隔てる枠組みそのものを象徴しているのではないかと思います。 - イヴェール
雲にのっており、立ち位置はやや高次。Romanの物語世界とは一線を引いた存在なのはイメージ通りです。 - オルタンス・ヴィオレット
生と死の側に分かれているのはわかりやすいですが、存在している世界が断絶しているとも考えられると思います。この二人はイヴェールとは違い雲にのっていないので、物語内の語り手のようです。ちなみに画像処理で反転したら全く同じ大きさでした。 - サヴァン
しばしばメタ発言をする彼が雲に乗っていないのは意外でした。確かによく考えると、彼はあくまで物語の内側から外側の事を言及していたように思います。とすれば彼は存在が特別なのではなく、サヴァン(賢者、学者)として世界を解き明かした存在なのかもしれません。
4. 第四扇(イベリア・Moira)
- 背景
アルハンブラ宮殿~パルテノン神殿~イリオンで合ってるかな? - ライラ・シャイターン
ライラは分かりますが、シャイターンも死サイドなんですね。異教の神説もあるし、神として死んで悪魔として蘇ったということでしょうか。ライラの絶対領域が嬉しい。 - 預言者と三姉妹
サディはPVのイメージより足腰が強そう。トゥリーンの後ろ髪がイベリアのジャケットと違う気がします。 - 詩女神六姉妹
小さいけど表情や姿勢が描き分けられているようです。特典イラストやコンサート演出では個性が付けられてたんでしょうか。雲の上=物語の外の存在だけど、手前ではなく奥側=現実世界からは遠い存在ということだと思います。 - 冥府組
Moiraは入れ子構造なので、冥府の立ち位置がなかなか難しいです。歌詞カードを見るとズヴォリン達を俯瞰しているようにも見えますが、叙事詩エレフセイアの登場人物のようにも、神話の中の存在のようにも見えます。今回は詩女神以外は全員同じ地平に立っていますが、「サンホラのアルバムMoira」としてみたときの立ち位置を表している気がします。あと三人とも手を振らずに歩いてるのが可愛い。 - エレフ・ミーシャ・レオン
レオンが死サイドなので時系列はイロマキア時だと思いますが、黒エレフではないんですね。というか黒エレフが何なのかよくわかってません。レオンが槍を持っていないのも最期に奪われたからでしょうか。
エレフには影がなく(重なって見えないのではなく、あるべき場所に無い。)、代わりにミーシャとタナトスのローブがあります。ミーシャがエレフの死を担ったことで、エレフは不死なる者となれたのかもしれません。生サイドから見るとミーシャは水面に写っているようにも見えます。 - ズヴォリン・エイレーネ
エレフ達と同じ位置に立っているのは、遺跡の発掘によって自分と同じ次元=歴史の舞台に立たせることができたからだと思います。
5. 第三扇(イド・Märchen)
- 背景
井戸の周りの白いやつは野薔薇じゃなくてMärchen初回版ジャケの白い花でしょうか。 - テレーゼ
成長したメルが見れてよかったですね。 - メル・エリーゼ・エリーザベト
メルの服はMärchenバージョン、エリーゼと目線を合わせており、ベトが手を伸ばしかけている様子から、時系列は磔刑の聖女以前の、童話の中で復讐中の様子だと思います。 - 屍人姫
生サイドと死サイドの分け方は、原曲中で生き返って復讐したか、死んだまま復讐したか。育ちの違いが肌色に現れてる気がします。
6. 第二扇(ハロ夜・絵馬?)
- 背景
狼欒神社と思しき鳥居と、後ろの山は富士山でしょうか。順番通りなら8thアルバムが来るはずの位置。絵馬と8thの関係が気になります。 - ハロナイ・ディアナ
ハロナイのマントの内側ってディアナのスカートと同じだったんですね。初めて気づきました。 - レニー・レニーオーランタン
レニーの影の位置にランタンがいます。生サイド死サイドそれぞれに描かれたということは、ランタンは単純にレニーの死後というわけでは無いと思います。ハロナイとも混じってそうだし、ハロウィンの化身的な存在だと思っています。 - ショーン・ケイト
生前はこんな場面もあったんでしょうか。 - 子どもたち
オリヴィアが可愛い。
7. 第一扇(ヴァニスタ・Nein)
- インタビューアー
親しげに話しているので祝賀会後でしょうか。マリマリの顔の印象はヴァニスタのジャケと少し違います。あと意外とポテンシャルが高い。 - 店主
店主=Michèle Malebrancheと見るのが一般的ですが、オゼ(扇の境界部分)に手をかけているのは、世界を隔てる檻の存在に気づいているように見えます。ベボ達とともに、屏風の中で最も手前に位置しており、誰よりもメタ存在であることが伺えます。紫のモヤは不定形の表現でしょうか。 - ベボ・黒猫四姉妹
ベボのマフラーの光は自分が創った(あるいは干渉した)者にかかっているようです。黒猫はあまり個別で認識していませんでしたが、改めて見直してしっかり個性があったことに気づきました。 - Nein組
全員一段手前の雲に乗っており、他の地平を元に、ベボによって作られた存在であることが分かります。彼女たちが乗っている雲は鳥居の手前まで来ており、これが輪∞廻を表してるのかもしれません。
ミーシャはMoiraの時よりポテンシャルが高いです。年齢もやや上だと思いますが、妊娠説もありえます。食物子は言わずもがな。あとステラが赤ん坊を見つめてるのがいいですね。 - ノエル
ヴァニスタだけで考えればインタビューアー達と同じ次元にいるはずですが、雲の上の、Nein組より一つ手前の(イヴェールと同じ)位置にいます。並び順から見て、Neinにおいて、改変された物語を俯瞰しつつ、ベボからの介入も受ける、という立ち位置を表してるようです。下にある星は屏風全体で唯一の天体ですが、これは星というよりはキャラクターとしての「よだか」ではないかと思います。
8. まとめ
思ったより長くなってしまいました。いつもながら細部までこだわって作られており、これまでの物語を再解釈するいい切っ掛けになりました。これで心置きなく『絵馬に願ひを!』に挑むことができます。
ところどころ断定口調ですが、あくまで私個人の解釈です。他の人の考察も見たり見なかったりなので、 見落としている部分や勘違いしている部分も多いと思うのでご承知おきを。